こんにちは。カスタマーサクセスグループのアンドレです。

今週は、思い出の味って、どこかに行かなきゃ食べられない、特定の誰かが作ってくれなきゃ食べられない、そういうものでもなくて、いつでも手を伸ばせば届くものなのだと、そう気づかせてくれる一冊をご紹介します。

いとしいたべもの (文春文庫)
森下 典子
文藝春秋
2014-05-09

 
著者のお母さんが作る思い出の料理もたくさん登場しますが、今もお店でいつでも買えるもの、コンビニで手に入るもの、芋ようかんだったりインスタントラーメン、カップ麺、それからCMでおなじみの海苔の佃煮、少女時代を思い出す味わいが今も残っていることが、温かい文章で綴られます。

ところでカップ麺の話が出たので私も思い出す。レストラン勤め時代、終電に乗って友人宅へ向かったある夜。地震で崩壊した本棚の片付けを手伝うという名目でした。

「うち今、何もないよー」「コンビニで何か買ってくわ!」というメールのやり取りの後に、夜中のコンビニで手に入れたミニワンタンとスープはるさめ。17時にまかないを食べてから何も口にせず、既に0時過ぎ。ぐずぐずになるまであえて放置したワンタンに、濃いめのスープが染みて果てしなく美味しい。つるつると喉越しのよいはるさめに、さりげなく絡まったあっさりスープ。ご存知かと思いますが、これら2つのカップはとても小さいので、ものの5分ほどで胃袋に吸収されまして。

お腹があったまって安心、ぱったりと眠った翌朝、もとい昼過ぎ。

シャワーを浴びながら猛烈な腹痛に襲われ、経験から思い当たることもあり「これは尿管結石に違いない。救急車を呼んでくれー」と訴え、びしょびしょのまま風呂場から貞子のように這い出てきて貧血と痛みで喋る気力もなくした私の代わりに、友人が救急隊員への応対をしてくれました。

「お名前は?」「年齢は?」「いつから痛いと?」

先ほどから激しい腹痛に襲われ、本人は以前にも経験のある尿管結石ではと訴えていることを簡潔に説明してくれた、医学部卒の素敵な友人。ところが彼女、最後にとんでもないことを言ってくれちゃいます。

「腹痛……昨晩は何を食べてましたか?」「カップ麺を2つ!」

ちーがーうー。それだと私は、フルのカップラーメンを2つ平らげたみたいじゃない?違うの、私が食べたのはつつましやかなミニサイズのワンタンと、スープはるさめなのー。カロリーも控えめ!

以後、夜中の小腹を満たすため事あるごとにミニワンタンを食べてきましたが、あの時の腹の痛みと朦朧とした靄の中の意識、人間は正確に言葉を発さなければならないという学び、全てがセットになって思い出されます。

さてこのように、絶品料理だけが思い出になるわけじゃない。まさに日常に潜む、思い出の味たち。なんとなしに、コンビニへ出かけていつもの味を探してこようかな、という気持ちになる一冊です。お楽しみください。