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トレタ恒例の社内勉強会「トレタ大学」。会社の内外を問わず、その道のスペシャリストを招き、広くて深い知識や考え方を全社員で共有しようという場です。
昨年12月に開かれたトレタ大学では、メイドインジャパンの工場直結ファッションブランド「ファクトリエ」の代表・山田敏夫さんをお招きし、アパレル業界でのイノベーションの取り組みを伺いました。

ファクトリエが実現したイノベーション

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ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役 山田敏夫(やまだ・としお)さん

1982年熊本県生まれ。実家は創業約100年の老舗婦人服店。大学在学中にフランスに留学し、Gucciパリ店に勤務。2006年ソフトバンク・ヒューマンキャピタルに入社し、メディア事業本部営業マネージャーを務めた後、東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する「fashionwalker.com」に入社。最先端のファッションビジネスを経験した後、2012年にライフスタイルアクセント株式会社を設立。同年、メイドインジャパンの工場直結ファッションブランド「Factelier(ファクトリエ)」を開始、同名のECサイトをオープンした。


山田さんが起業したのは6年前。生まれ故郷の熊本を拠点に、たったひとりでスタートを切りました。

「衣食住の『衣』から日本を良くしたいなって。その思いだけでした」

実際、いま日本のアパレル業界は危機的な状況です。アパレル製品における国産品の比率をみると、1990年には50.1%だったものが2014年には3.0%にまで減少。その約20年の間に、業界で働く職人さんが800万人も減ったという話です。

「それでも誰も気づかないんですね。なぜならアパレル業界はデザイン・価格・ロゴを大事にしてきて、誰がどこで作っているかっていうのを気にしないし、むしろ隠してきたから。その結果、工場はつねに赤字で若手も不在、意識が上がらないっていう負のサイクルから抜け出せなくなってしまった。それがアパレル業界の現状なんです」

そんな業界を変えて、みんなを幸せにするにはどうすればいいのか。
山田さんがまず手がけたのは「誰が作っているかオープンにすること」。すべての商品に工場名を明記して「ファクトリーブランド(工場の自社ブランド)」として販売することに踏み切りました。
と同時に、希望小売価格をやめて「希望工場価格」にしました。

「品質で世界一のものを作りたかったんですね。いままででいちばん良いものを作ってください、と。それで出てきた金額の倍を僕らの販売価格にしているんです。決して安くはないんですが、ちゃんと工場が儲かって、メイドインジャパンとしてふさわしいものとして世に出していけるわけです」
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そうすることで、工場の人たちが自主的にモノづくりに取り組みはじめ、どうやったら人びとに喜んで買ってもらえる商品が作れるか、主体的に考えるように。こうして下請け意識からの脱却を促しました。
その結果、工場に活力が生まれ「新卒採用につながっていったというケースも増えてきているんです」と山田さんは言います。

工場が品質世界一を目指せて、しかもきちんと利益が得られる仕組みを提供すること。そんなファクトリエの試みは、アパレル工場の「負のサイクル」を覆して「正のサイクル」に転換するというイノベーションを成し遂げたのです。

サプライズとコミュニケーション

もちろん、いくら「正のサイクル」や「品質日本一」を実現したとしても、製品が売れなければ話になりません。そのために山田さんは、どうしたのでしょうか。

「お客さんを広げていくときって、僕たちには『クチコミ』しかありませんでした。じゃあ、どういうことがあるとクチコミで広げてもらえるんだろうって。いろいろ考えましたが、結局は『誰かに聞かれなくても自分から言っちゃう』というレベルまで気に入っていないと、人はクチコミしてくれないってことがわかってきたんですよ」

たしかに“誰かに言われなくても自分から言っちゃうレベル“と呼べるものって、自分のことを顧みるとそんなに多くはありません。
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「これはあくまでも僕の理論ですけど、お客さんにクチコミを広げてもらおうと思ったら、満足させるだけじゃ足りないって思うんですよ。それ以上に、感動させ、熱狂させるしかないって。そこまで行かないと『自分から言っちゃう』レベルにまでたどり着かない。経験的にそう考えたんですね」

では、それに必要なものは何なのか。「山田理論」によるとそれは、
「サプライズ」と「コミュニケーション」。
このふたつだといいます。

期待値を超える驚き。そして売り手と買い手との間に生まれる絆。このふたつが感動を呼び、熱狂に繋がっていくはずだというわけです。

「僕は最初、品質の良さだけがクチコミを呼ぶって思ってたんですね。でも、それだけじゃないんだ、と。実店舗に来た人のリピート率って、ウェブサイトから購入した人に比べると半端なく多いんですよ。これは何だろうって考えると、やっぱり、商品や人との絆だったんですね」

このため山田さんは、ファクトリエの「ファンイベント」や「工場ツアー」を積極的に開催。実際に商品に触れること、作り手・売り手・買い手が顔を合わせて直接コミュニケーションすることを大切にしているということです。

「いいものと接する機会がなかなかない人や、そもそもいいものって何かを知らない人に、いくら言葉で『いい』と言っても伝わらないですよね。だから、できるだけ多くの人に『いいもの』を知ってもらう機会をつくりたいですし、つくっている人たちの思いを直接知る場をつくりたい。そうやって同志を増やしていくことが必要だと考えているんですよ」

と山田さんは話を締めくくりました。

ファクトリエとトレタ、共通する「思い」

講演の終わりには、トレタ代表・中村仁とのトークセッションも。
ここでは、会社として目指していることは、ファクトリエもトレタも「どっちもほぼ同じ」と、両代表が声を揃えました。

アパレル業界と飲食業界。どちらも「アナログ」なままで、ともすれば激変する時代のスピードに取り残されそうな業界といわれています。

「そんな業界のみなさんに向けて『変わりましょう!』って言っているのがファクトリエさんであり、ぼくたちトレタでもある。志はまったく同じだと思います」

と中村。山田さんも、こう言います。

「ぼくがやりたいことはアパレル業界の再生。産業を、もういちど元気にするのが目標なんです。そのあたりはトレタの理念『食の仕事を、おもしろく』に込められた思いと同じだと思います」

会社としての思いや志、社会的な意義を語ることができるかどうか。それによって「ユーザーに伝わるものが全然違う」というところでも、ふたりの見解は一致しました。
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山田さんは現在「年間1万人の人びとの前で話をする」という目標を掲げて、勉強会や講演活動を実施しているところだといいます。

「ただそれだけじゃ足りないんです。僕たちの思いをインターネットを通じてどう伝えていくか、それがこれからの課題ですね」

と山田さんは話しています。
それはきっとトレタにとっても、今後は同じテーマが重要になっていきそうな気がしました。


そして。講演の終了後「品質の見極め方講座」と題して、高品質なシャツの見極め方や大量生産とそうでないジーンズの見極め方など、ファクトリエの実際の製品に触れながら学べる体験会も合わせて開かれました。
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山田さん、ファクトリエのスタッフのみなさん、貴重なお話と体験をありがとうございました!

ちなみにファクトリエでは、今回のレポートのように、一般企業を対象にした講演会や品質の見極め力講座を無料で開催されています。その名も「ものづくりカレッジ」! レポートに興味を持たれた方は、ぜひ開催を検討してみてください。目からウロコのお話が盛りだくさんですよ!
https://factelier.com/mono-college/

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(レポート/マーコムグループ こばやし)